過去ログ(No.131〜140)
  
短いです。今回。 投稿者:日向@うへぇ
 
(Bパート)
固体さんが観念して目を閉じたそのとき。
首を吊られ、ぐったりとしていたNATが突然、目を見開いた。
NAT「甘いよ!」
その瞬間、、ソリダスのパワードスーツから数条のプラズマが走った。
ソリダス「なっ・・・なにっ?!」
驚愕に顔を引きつらせ、ソリダスがふらふらとよろめく。
その拍子に締め付けが解除されたか、よっと軽い掛け声とともにNATが触手を振りほどいて着地する。
NAT「・・・げほ・・・死ぬかと思った・・・」
固体さん「NAT!」
無事だったのか、と続ける固体さん。
だが、その視線はソリダスから外されてはいない。
ソリダス「な、なんだ・・・?!」
よろめくソリダス。
だが、様子が尋常ではない。
どうやら彼が着用しているパワードスーツに何らかの故障が生じたか・・・
固体さん「な・・・何が起こっている?」
NAT「・・・げほ・・・走査された時にパワードスーツの動作を制御するプログラムに逆アセンブラかけてデータ書き換えたついでに「神の光」でシステムつぶしてやったよ」
ギリアン「・・・なんて奴だ」
あきれた口調のギリアン。
NAT「いや、でもまさか「神の光」が使えるとは思ってなかったよ。データ書き換えて阿波踊りでもさせてやろうかな〜と思ってたら使えたんだよね、あはは」
固体さん「でも、どうやって」
現実世界は全くのアナログ世界。
そこへデジタルのデータ攻撃である「神の光」を使うことなどできないはず。
一体どうやって・・・と呟いたそのとき。
プチ「もしかして、ソリダスの走査で使われた電気信号を逆流してデジタル部分に攻撃をかけたのでは?」
NAT「正解〜!ほら、俺ってデンパな人だし、電波や電気信号などから侵入することができるみたい」
固体さん「・・・さすがAI、というべきか・・・」
ということはあの、気を失ったかのように見えたのはもしかして・・・
NAT「いや〜、でもほんと、死ぬかと思ったよ。俺が侵入できることに気づくのもう少し遅かったら死んでたかも」
ま、でもこれでパワードスーツを脱がない限りソリダスは戦えないよ、と得意満面のNAT。
相手がコンピュータなら戦えるというのも皮肉なものだがそれで命拾いした固体さんは少々ほっとしたらしい。
固体さん「・・・とにかく、今のうちに伸しておくか・・・」
兄貴だからといって遠慮するわけにはいかん、と固体さんはゆっくりと立ち上がった。
その手に握られているのは愛用のスティンガー。
 
(固体さん、パパさんをボコるの巻・・・しばらくお待ちください)
 
ソリダス「おのれスネーク!この恨み、いつか晴らしてくれる!!!!」
何人もの警官に囲まれ護送車に押し込まれながらソリダスが叫ぶ。
ソリダスに続いて運び込まれるはモザイクものの状態になっているヴァンプ。
NAT「・・・やっぱ罪状はストリーキング、なのかな・・・それとも業務上過失致傷?」
固体さん「・・・知るか」
だが、これでひとまず黒幕の一人は片付いたな、と疲れた表情の固体さん。
ギリアン「一人?」
固体さん「ああ、まだいるはずだ・・・俺の抹殺を目論む「G.W.」の幹部がな・・・」
さて・・・と遠ざかる護送車から視線を外し、固体さんはヒトダマを見た。
ヒトダマ「ふぅ・・・これでとりあえずは一件落着ですね〜」
固体さん「・・・ああ、」
ところで、と固体さんがぐいっとヒトダマの尻尾を掴む。
固体さん「お前には随分と助けられたな」
ヒトダマ「いやぁ〜それほどでもないですよぅ〜」
だから尻尾引っ張りながらはやめてください〜と続けるヒトダマ。
いや、これで掴みおさめになると思うとな、と意味ありげに呟く固体さん。
固体さん「NATはともかく、お前とはここで別れることになるかと思うとな・・・お前にも帰るべき所はあるんだろう」
ヒトダマ&NAT「・・・あ゛」
固体さんの一言に、ヒトダマとNATが同時に呟いて固まった。
 
次回「帰るべき所」
・・・の、前に別会場で未だに続いているオルガ、メリル、ホーリーの大乱闘をお楽しみ下さい。
 
一応続きがあるようなところで決着。
ってかボコるシーンをカットしたのは色々わけがあるのです。

帰るのか帰らないのか 投稿者:天麒麟@酔っぱらい
 
「帰るべき所」
 
(Aパート)
ヒトダマ「は、はい、一応は……」
何故か口ごもるヒトダマ。
固体さん「ちゃんとこっち(現実世界)にログアウトできたんだ。帰れるんだろ? 短い間だったが無理につき合わせて悪かったな」
ヒトダマ(汗)「……い、いえ、私もそれなりに楽しかったですから〜」
NAT「スネーク、ちょっとごめん」
少々困った表情でやりとりを聞いていたNATが、無理矢理固体さんの手からヒトダマを奪い取る。
一瞬尻尾がびよ〜んと伸びたヒトダマが、小さくふぎゃあっと悲鳴を上げた。
ギリアン「……何やってるんだ? あいつらは」
捜査員に現場の状況を説明していたギリアンが戻ってきて尋ねる。
NATとヒトダマは固体さんたちに背を向け、なにやらひそひそと密談中だ。
固体さん「おい、どうした!?」
NAT(ちょっと慌てて)「あ、い、いや別に、ちょっとこっちの話」
ひょこひょこと戻ってくる二人。
固体さん(ヒトダマに向かって)「……で?」
ヒトダマ「あ、あの……」
ヒトダマは何か言いたそうに固体さんを見上げたが、直ぐに俯いてしまった。
ヒトダマ「……帰ります。お名残惜しいですけど、皆さんとお会いできてよかったです。……裸いでんくん、叔父さんの言うこと聞いて、いいこにしてるんですよ〜」
頭をなでられて、こっくり頷く裸いでん。いい遊び相手(オモチャ?)がいなくなるのが少々寂しいようだ。
よいこらせとスパーダを担ぐと、ヒトダマは深々と頭を下げた。
ヒトダマ「……それでは、失礼します〜」
固体さん「ああ、達者でな」
しおしおときびすを返すヒトダマ。その丸い後ろ姿が少しずつ小さくなっていく。
プチ「……何か、元気ありませんでしたねぇ」
ギリアン「そういえばテンション低かったな」
NAT「……ちゃんと帰れるのかな」
NATが妙なことを言った。
固体さん「?」
どういうことだ、と尋ねる固体さん。
ひょろひょろと遠ざかるヒトダマの後ろ姿を見送りながらNATが答えた。
NAT「確かに「帰るべき所」はあるけど、「帰り道」がなくなったんだよあいつ」
NATの言葉に、固体さんとギリアンの表情が強ばる。
固体さん「……ちょっと待て、ログアウトできれば帰れるんじゃないのか?!」
NAT「もともとあいつはこの次元の存在じゃないの! どうやって何のために来たのかはわからないけど、とにかくアラストルステージに本来の世界へのアクセスポイントが設定されてたんだ。けどあのどさくさでポイントのマスタデータが吹っ飛んでるから、「帰り道」がなくなったってーの」
連れ出された時「元の世界に帰れない〜」と騒いでいたのは、単に現実世界への帰還という意味ではなく、自分の「世界」への帰還の意味も含まれていたのだ。
ギリアン「バックアップはどうしたんだ? マスタデータは消えても、バックアップがあれば何とかなるんじゃないのか?」
プチ「NAT-EEの消滅時に膨大な量のバックアップファイルが破損、削除されています。おそらくポイントデータもその中に含まれているかと」
もしヒトダマが連れ出されることなくあのフロアに留まっていたら、アラートが鳴った時点で即元の世界に帰還できただろうけどね、とNATが続けた。
NAT「でもどっかの誰かさんが強引に連れ出してしまったために」
固体さん(茫然と)「帰るチャンスを逃した……と……」
NAT「そういうこと」
どっかの誰かさんとは……言うまでもない。
固体さん「あいつ……何でそういう大事なことを言わないんだ!?」
動揺のため、つい声を荒げてしまう固体さん。その剣幕に、NATがちょっとたじろぐ。
NAT「い、一応説明はするつもりだったらしいよ。で、でも……」
固体さん「でも?」
NAT「……何か、自分はもう用無しみたいだから、帰るしかないって……」
固体さん「!」
NATの言葉に、固体さんは思わず息をのんだ。
固体さん「お……俺はそんなつもりで言ったんじゃないぞ!」
NAT「でも俺にもそう聞こえたよ。「用は済んだからさっさと帰れ」みたいな感じに」
ギリアン「スネーク……お前そんなこと言ったのか?」
捜査員と話をしていたためヒトダマとのやりとりを聞いていなかったギリアンが眉を顰めた。
ギリアン「そいつは酷いな。いくらあいつがMでもそりゃあ傷付くだろう」
プチ「それであんなにテンション低かったんですね……気の毒に」
一緒に行動した時間が固体さんよりほんの少し長かった二人は、当然の如くヒトダマに同情的だ。
ギリアン「スネーク、もしあいつがいなかったら俺達、「零」ステージで間違いなくキリエさんに瞬殺されてたぞ」
固体さん「……わかっている!」
「零」ステージだけではない。一体何度あのウスラボンヤリに助けられたことか。
固体さん「あのバカ……帰り道がないのにどうやって帰るつもりだ?」
固体さんは複雑な表情でそう呟いた。
(Aパート終了)

変な引き 投稿者:天麒麟@酔っぱらい
 
(Bパート)
これ以上引っ張り回すわけにもいくまいと考えて解放したつもりだったのに。
一言「帰れなくなった」とそう言ってくれれば……。
視線でヒトダマを追うが、もうその姿は豆粒よりも遙かに小さく、名前を叫んでも届く距離ではない。
そして、次いで固体さんが取った行動に、NATがげっ、と小さく呻いた。
NAT「ス、スネーク、ちょっとそれはやばいと思うよ……(汗)」
照準がロックオンされる。
ギリアン「やめとけ、スネーク! あいつには何の非もない!」
プチ「これ以上は可哀想すぎますよ!」
周囲の制止を振り切るかのように、固体さんはスティンガーの発射ボタンを押した。
 
さて。
固体さんたちに別れを告げたヒトダマは、途方に暮れた表情でへろへろと低空飛行を続けていた。
仕事はいきなり失職、給金もなし。帰ろうにも帰る術は失われ、さらには慕っていた人のつれない態度(これが一番のダメージかも)。
これからどうしようかと重い溜息をついたその瞬間。
呼ばれたような気がした。
?と振り返ったその目の前には……なんとスティンガー・ミサイル!!
ヒトダマ「ほっ、ほにゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!???」
ちゅどおおおおぉぉぉぉぉん………ひるるるるるる、ぽて。
直撃、だった。
 
固体さん「よし。落とした」
NAT「……んな無茶な……(茫然)」
ギリアン「引き留めたいなら他にも方法あっただろ……?(愕然)」
プチ「……(ただただ唖然)」
 
固体さん「……というわけでだ、帰る方法が見つかるまでは俺が面倒みてやる。判ったか?」
スティンガーで撃ち落とされ、回収されたヒトダマに言い聞かせる固体さん。
ヒトダマ「は、はひ………お世話に………なりまふ………(かくっ)」
トレードマークの前髪はちりちり、眼鏡には皹が入り全身焦げだらけのヒトダマは息も絶え絶えにそう答えると、そのままくてりと気を失った。
固体さん「で、コイツの処遇は決まったが……お前はどうする?」
NAT「俺? うーん、どうするかなあ。ヒトダマと違って別に帰るところなんてないし、このままここに腰落ち着けようかなあ」
ぽりぽりと頬を掻きながら考え込むNAT。
NAT「俺ってさ、いいSEになれると思うんだよね。何しろ本職だし。あ、先に移民管理局のデータ弄る必要あるかな。架空の移民データ作って住民登録して。やっぱ行政サービスは受けとかないと」
ギリアン「お前……一応ここに公僕がいるんだからそう堂々と違法行為口にするなよ(汗)」
固体さん「働く気があるのは結構なことだ。だがな……」
ひょい、と何かをNATに投げてよこす。受け取ったNATがちょっと変な顔をした。
NAT「メモ帳と……ペン?」
固体さん「そこに自分の名前を書いて見ろ」
NAT「失敬だなあ……名前くらいかけるよ」
少々むくれて紙にペンを走らせようとする……が。
NAT「あ、あれれ?」
そこに書かれたのは文字どころか、ミミズが踊り回って悶絶死しているような線が数本のたくっているだけ。
しかも。
NAT「ス、スネーク……」
固体さん「ん?」
NAT「ペンが……重い……(汗)」
筋力マジで皆無のNATだった。

次回、「新たなる敵」 新シリーズ突入の気配が!(するような気もなんとなくする)

すでに前哨戦? 投稿者:日向@・・・・・  
 
MG-Snatch! 第?章 「ヒトダマ、故郷を探して三千里」編
(なんで?章なのか。裸いでん救出編へ行くまでのエピソードをどう区切ればいいか分からなかったため)
 
「新たなる敵」
 
固体さん「・・・(滝汗)それじゃ雑用ができずに即クビだぞ」
先日某100円均一ショップで購入した10本セットのボールペンですら重いと言うNATの筋力、一体どうしたものやら。
というよりも働く意欲はあってもこれでは通勤でバテるのは必至である。
固体さん「・・・ギリアン、お前の家で預かれないか?」
さすがに俺の家に女は連れ込めない、とこぼしつつ固体さんがギリアンに尋ねた。
ギリアン「・・・事情が事情でもな・・・ジェミーが・・・怒るだろうな」
NAT「いやいや、俺だって夫婦水入らずに水差す気はないし。それにスネーク、俺は全然構わないよ。スネークが引き取るのイヤって言うならその辺でダンボールハウスでもこさえて生活できると・・・」
固体さん「馬鹿者ォ!ダンボールは潜入任務の必需品だ!お前ごときが建材に使っていいものではないっ!!」
すぱーん!
何故かアーセナルステージ突入時のコンテナの中に入っていたハリセンが快音を響かせる。
NAT「・・・った〜・・・なにもそこまで言わなくても」
思いっきり頭をはたかれたNATが涙目で抗議する。
固体さん「ダンボールは真心を込めて使うもの、建材に使えばダンボールが泣くぞ」
NAT「・・・そういうスネークもネオ・コウベシティに移住してきた当初はダンボールハウスで暮らしてたくせに・・・」
固体さん「・・・何か言ったか?」
NAT「あ、い、いや何も・・・」
とにかく、俺のことは気にしなくていいからと続けるNAT。
NAT「それこそNAT-EEの件とかで迷惑かけたし、これ以上スネークたちに迷惑はかけられない。大丈夫だよ、なんとかなるさ」
すぱーん!
再び快音を響かせるハリセン。
固体さん「ペンも握れない、文字も満足に書けないお前が生きていけるほどここは平和じゃない!いずれにせよお前が一人で生活を始めたら3日も持たずにスナッチャーにやられる」
それにこの調子だと・・・と意味ありげにつぶやく固体さん。
NAT「何だよ」
固体さん「恐らく、お前には現実世界での常識というやつもないだろう」
NAT「・・・」
固体さん「とにかく、少なくともお前が一人で生きていくのに必要な筋力と常識が身につくまで俺が面倒を見てやる。ただし・・・」
突然口ごもる固体さん。
NAT「・・・ただし?」
固体さん「・・・い、いやなんでもない」
もごもごと言葉をにごらせながら、固体さんはNATから視線をはずした。
プチ「これで何とか一安心ですね」
ギリアン「・・・ああ、そうだな」
それじゃ、俺たちも家に帰るかとプチに向かって言うギリアン。
固体さん「・・・ギリアン、お前にはずいぶんと助けられたな」
ギリアンとプチの会話に固体さんが真顔に戻る。
ギリアン「それはお互い様だろ?それにこいつらに楽しませてもらったからな」
固体さん「ああ、全くだ」
次に組むのはいつになるだろうなとしみじみと、固体さん。
ギリアン「たまには本部にも顔を出してくれよな。皆が喜ぶ」
固体さん「ははは・・・スカウトされるのはごめんだからな」
バイトのほうが実は時給がいいんだよと続け、固体さんは片手をギリアンに向けた。
その手を握り返し、ギリアンが何かあれば、と口を開いた。
ギリアン「ヒトダマの件に関しては俺にも責任があるからな。俺も手伝わせてもらう」
固体さん「それは心強い」
互いに、スナッチャーに食われるなよと合言葉のように言い合うと、ギリアンはくるりときびすを返して歩き出した。
ギリアンの肩に乗るプチが、皆さんお元気でと言う言葉がだんだん遠ざかる。
その後ろ姿を見送り、固体さんは改めてNATを見た。
固体さん「・・・行くか」
うん、とNATが頷き、固体さんからまだ気絶している焦げ焦げのヒトダマを受け取った。
(ヒトダマは霊体のなので重みはないらしい)
(Aパート終了)

・・・オチてないし 投稿者:日向@・・・・・
 
(Bパート)
NAT「・・・で、スネークの家ってどこなのさ」
大通りから少々外れた道を歩きながらNATがたずねる。
固体さん「すぐそこだ」
NAT「・・・なーんか、すごくヤバそうなところだと思うんだけど・・・」
どちらかというと裏通りに近い雰囲気、道のそこここにゴミやらスナッチャーの残骸やらが転がっている。
固体さん「なに、まだ安全なほうだ」
そう言いつつ、固体さんはそこだと通りの一角を指差した。
NAT「・・・え?」
思わずNATが目を丸くする。
そこにあるのは・・・NATの予想を裏切るものだった。
どう見てもアパートには見えない、雑居ビル。しかもボロい。
NAT「・・・ここ?」
固体さん「・・・ああ、俺の職場兼家になる」
雑居ビルの玄関を開け、固体さんはポストにたまっていた郵便物を取り出し、エレベーターのスイッチを押す。
モーターの動作音とともにエレベーターのドアが開く・・・
と、同時にエレベーターフロアに響く爆発音。
NAT「うわっ!」
爆風によろめきながらNATが声を上げる。
NAT「ス、スネーク!」
固体さん「・・・やはりな」
スティンガーを手にした固体さんがふう、とため息をつく。
その固体さんの視線の先には・・・野良スナッチャーの残骸が。
NAT「・・・もしかして、いつもこうなの?」
固体さん「これを見て、まだ一人で生活できると言えるか?」
にやり、とNATにいたずらっ子のような笑みを見せると固体さんは仕方ないから、と階段を差した。
固体さん「エレベータがこれじゃあ、歩いて上るしかないな」
NAT「・・・一応、それくらいの体力はあるよ・・・」
赤ん坊じゃないんだからさ、とNATが不満そうに固体さんの後をついて歩き出した。
固体さん「今朝方人間になりました、って奴が偉そうに言うんじゃない」
 
ここが俺の仕事場だ、ととある部屋の前を通り過ぎながら固体さんが説明する。
NAT「・・・「フィランソロピー探偵事務所」・・・?スネーク、探偵やってたんだ」
固体さん「いろいろ訳あって「FOX HOUND」を辞めて以来な」
NAT「・・・「メタルギア」プロジェクト・・・?」
低く、つぶやいたNATの言葉に固体さんが何故それを、と振り返り、尋ねる。
固体さん「いくら映画化、アニメ化されたとしてもそのプロジェクトの名までは出なかったはずだ」
NAT「俺ってデンパな人だし」
ただ、それだけを意味ありげに、尚且ついつになく重い口調でNATがつぶやいた。
NAT「・・・で、スネークの家って・・・」
固体さん「・・・ここだ」
とあるドアの前で立ち止まる固体さんとNAT。
NAT「(汗)・・・あのさ・・・スネーク・・・ここっ・・・て」
固体さん「(溜息)・・・何も言うな」
NATが思わず声を上げたのはドアの上に取り付けられた「倉庫」の札とスネークの家であるという証明でもある表札に気がついたから。
家のカードキーを取り出し、スリットに通すとピッという音とともにドアが開く。
その、開いたドアの奥を覗き込んでNATがげっとつぶやいた。
NAT「・・・看板どおりじゃん・・・」
そこに広がるのは家というより倉庫。
むき出しの天井には何本もの配管、窓のない部屋に丁寧に積み重ねられた段ボール箱と後から工事したらしい壁。
その壁でだだっ広い倉庫をいくつかの部屋に仕切っているらしい。
そして、床に散らばるゴミと着替えと武器。
NAT「・・・ここで生活してるんだ・・・」
固体さん「ここが一番家賃が安いからな」
固体さんがそう言ったとき、NATの腕の中でヒトダマが小さくうめいて身じろぎした。
NAT「・・・あ、ヒトダマ」
ようやく意識を取り戻し、首をふるふると振るヒトダマ。
ヒトダマ「・・・・・・・ほにゃぁぁぁぁ・・・あの・・・ここ・・・ここって・・・どこですかぁ」
固体さん「俺の家だ」
NAT「・・・家、と言える物だったらね」
あきれ果てたようにNATがうなる。
固体さん「・・・と、いうわけでだ」
奥の部屋に入り、なにやら手にして出てくる固体さん。
ぽい、とNATとヒトダマに投げてよこす。
NAT「・・・えーと・・・モップ?」
ヒトダマ「・・・はたき、ですよねぇ・・・」
怪訝そうに顔を見合わせる二人。
その二人に、固体さんが厳しい面持ちで宣告する。
固体さん「これからは俺がお前を鍛えてやる。まずはそれで俺の部屋掃除だ」
NAT「・・・えぇぇぇぇ?!」
・・・当分の間は固体さんが敵になりそうな予感を感じたNAT。
NAT「・・・うぅ・・・重い・・・」
固体さん「掃除が終わるまで飯はヌキだからな」
NAT「そ、そんなぁ・・・(涙)」
 
次回「コペルソーン・エンジン」
ヒトダマが元の世界に戻るための鍵を握るのは何だ?
すぱーん!
NAT「そんなこと言ってる暇があるなら手伝ってよ!!」←ハリセンを両手で構えつつ

ありゃあ 投稿者:天麒麟
 
「コペルソーン・エンジン」……いってみよ!
 
(Aパート)
ちゃっかりと新たな居候に部屋(?)の掃除を押しつけると、固体さんは「用事がある」と言って出ていってしまった。
ぽつねんととりのこされる二人。
NATが溜息を吐いた。
NAT「拾ってもらったのはありがたいけどさ……」
ヒトダマ「しょうがないですよ〜。世の中なんてこんなもんです。さ、ちゃっちゃとやってしまいましょ」
はたきを手にひょろひょろ〜と手近な棚へと漂っていくヒトダマ。現実世界においてはどうやらヒトダマの方に一日の長があるようだ。
NATは再び溜息を吐くと手にしたモップを動かしてみた。
……が。
NAT「ふぐっ………………(ぜぇ、ぜぇ)」
いきなり息切れを起こすNAT。
ヒトダマ(慌)「あああ、NATさんはゴミの分別してください〜〜」
NATにとってモップはいきなりハイレベルな掃除用具だったらしい(笑)。
 
その頃、固体さんが向かったのは彼の「職場」である『フィランソロピー探偵事務所』だった。
固体さん「どうだをたこん、何かわかったか?」
事務所に入るなり開口一番これである。挨拶も何もあったもんじゃないが慣れているのだろう、事務所の奥で端末に向かっていた男が顔を上げた。
やや痩せてはいるが穏やかで理知的な顔立ち。固体さんのよき相棒であるをたこんことハル坊である。
をたこん「君の連絡を受けてから、「G.W」のVRシステムをいろいろ解析してみたんだけどね」
マウスをクリックすると、ディスプレイにアーセナルの構造が表示された。
をたこん「どうやら通常のVRシステムではないようなんだ。別次元にアクセスポイントをターゲッティングできるなんて、どう考えたって普通のシステムじゃないよ。これは多分……」
固体さん「多分?」
をたこん「……『コペルソーン・エンジン』を搭載してるんじゃないかと思うんだ」
聞き慣れない言葉に首を傾げる固体さん。
をたこん「『コペルソーン・エンジン』っていうのはDr.コペルソーンっていう人が開発した特殊なシステムでね(以下難解な専門用語の羅列)」
固体さん(汗)「い、いや説明は結構だ。で、その『コペルソーン・エンジン』を使えばヒトダマが元の世界に帰ることも可能なのか?」
以前、レアなフィギュアについてうっかり説明を求めてしまったばかりに延々4時間18分にわたってフィギュアの価値からその歴史に至るまでの講義をうける羽目になってしまった経験のある固体さんは、慌てて話題の矛先を変えた。
をたこん「う、うん、まあ、K・エンジン(長いので略)が本当に搭載されてるかどうかもまだ推測の段階だけどね。それらしきシステムが発見されたら警察かJUNKER本部から連絡を貰うことになってる。本格的な調査はそれからだね。肝心のデータが飛んじゃってるのは痛いけど」
全力は尽くすよ、とをたこんは言葉を続けた。
をたこん「それから、そのヒトダマ……だっけ? そいつがこっちの世界に来たときの状況が知りたいな。それが手掛かりになるかもしれない」
固体さん「そういえば聞いてなかったな。……わかった、本人を呼んでこよう」
来たときの状況だけでなく、正体から何から謎だらけだが、と思いつつ固体さんが相棒の側を離れようとしたその時。
一瞬窓の外が真っ赤に光ったかと思うと、激しい爆音と振動が響きわたった。
をたこん「なっ、何!?」
固体さん「裏の空き地からのようだが」
スナッチャーの攻撃か、いや早くも「G.W」の刺客が?
思い当たる節てんこ盛りの固体さんは、大急ぎで事務所を飛び出した。
 
裏の空き地の地面には、直径3m程の丸い焦げ跡が付いていた。
そしてその前に佇むは……何とNATとヒトダマ。
固体さん「お前ら……何をしている!?」
ヒトダマ(のほほん)「あ〜、固体さぁん」
NAT(のほほんその2)「何って……燃えるゴミの焼却だけど?」
固体さん「ゴミの……焼却……?」
もしかしてこの丸い焦げ跡がそうなのだろうか?
しかしそれなら燃え滓くらいは残っていそうなものだが、なーんにもない。
NAT「だって量は多いは今日は回収日じゃないはでさ、どうしたもんか悩んでたんだけど、ヒトダマがいい方法あるっていうから」
ヒトダマ「積み上げて一気に「バーン・ストーム」で燃やし尽くしてみましたぁ」
バーン・ストーム。炎属性魔法でヒット数1ながら威力はでかい。確かにそれならばゴミなど一瞬にして跡形もなく燃え尽きるだろう。
固体さん「なっ……!!」
固体さんは一瞬呆気にとられそして……。
固体さん「無茶をするなーーーっっ!!」
すぱん、すぱーーん!!!
小気味よいハリセン2連打音が、朝のダウンタウンに響きわたった。

謎解きっぽいか? 投稿者:天麒麟
 
(Bパート)
NAT「エレベーターごとスナッチャーをぶっ飛ばしたのは無茶に入らないのかな……」
後頭部を押さえてぶーたれるNATを一睨みで沈黙させると、固体さんは叩かれて半失神状態のヒトダマを掴み上げた(勿論尻尾)。
はうっ、と意識を取り戻すヒトダマ。
固体さん「ちょっとこいつに用がある。連れて行くから掃除はお前1人でやってろ」
えええっ、そんな〜〜とNATの泣きが入った。
NAT「俺1人じゃ絶対無理だよ! まだ水まわりとか全然だし、モップは重いし……」
固体さん「すべては真っ当な人間になるための修行だと思え。(ヒトダマに)行くぞ」
ヒトダマ「NATさぁ〜ん、帰してもらえたらお手伝いしますから、お体に障らない程度にがんばってくださぁ〜い」
だから固体さん尻尾はカンベンしてぇ〜というヒトダマの泣き言が遠ざかっていく。
1人残されたNATは思わずその場にへたりこんだ。
NAT「お願いヒトダマ……早く帰ってきて……(泣)」
 
『フィランソロピー探偵事務所』にはいつしか、他のメンバーも集まっていた。
所長のロイ・キャンベル大佐(誰も所長とは呼ばない)と、所長秘書のメイ・リンである。
ヒトダマ「……お一人足りないようですが?」
メイ・リン「メリルさんはさっき連絡があって、二日酔いで出てこられないんですって」
ヒトダマの前に紅茶のカップを置きながら、やや呆れたようにメイ・リンが言った。
大佐「何でも昨日、話の合う友達ができたとかで一晩飲み明かしていたらしい。……全く困ったもんだ」
固体さん「遺伝じゃないのか?」
大佐「混ぜっ返さないでくれ、スネーク」
苦り切った表情の大佐に、ふとそういえばあの後メリルはどうしたのかなと思う固体さん。
をたこん「まあ、彼女なら大丈夫だろう。で、えーっと……ヒトダマ、でいいのかな」
ヒトダマ「はい、それで結構ですぅ」
をたこん「こっちの世界に来たときのことを話してくれないかな」
ヒトダマ「はぁ……」
紅茶を軽く一口啜ると、ヒトダマはぽつぽつとことの次第を話し始めた。
 
あのですね、私向こうでもダンジョンの管理人みたいなことやってたですよ。いえね、こういう外見でしょ? 人を脅かすとかそういうのに向いてないんですね。それで自然と管理人とか案内役とかそういう仕事しかできなくてー。で、最近私、とあるダンジョンを辞めちゃったんです。まあ……ちょっと上の人(?)と意見の食い違いといいますか平たくいうと喧嘩して飛び出しちゃったんですね。
あはは。
それで新しい職場求めてたところに、今回のお勤め先のチラシを見つけまして。
こんなチャンスないなーと思って面接場所に行ってみたところ誰もいなくて、おかしいなーと思ったら、いきなりですよ。いきなり変な吸引力、っていうんですか? そういうのを感じて、あらら〜〜と思う間もなく放り出されたのがあのアーセナル内部だったんです。
私ね、こう見えても結構長いことヒトダマやってまして、その間には自然にできた空間の歪みみたいなとこに吸い込まれたことあるんですけどね、その感じとはちょっと違いましたね。何というか無理矢理というか、とっても人工的な感じがして。
それでちょっぴり不安もあったんですけど、元の時空間の座標をちゃんとターゲッティングしてるから仕事が終わればいつでも帰れるって言われたもんで……。
誰に、ですか? さあ、自動音声でしたから。ダンジョンにはよくあるんですよね…。
 
ヒトダマ「……ま、概ねこんな感じですぅ」
一気に話して喉が乾いたのか、ずずーっと紅茶を啜る。
腕組みをして聞いていた固体さんがふむ、と軽く頷いた。
固体さん「お前が別の次元、というか時空から来た経緯はわかった。それじゃあ2、3質問するが」
ヒトダマ「はい、なんなりと」
固体さん「お前の住んでいる世界とは、どんなところだ?」
ヒトダマ「うーん、そうですねぇ……こことそんなに変わらないです。科学も発達してるし、生活水準とか風俗もほぼ一緒くらいですか。ただ、魔法も発達してる、というか認知されてます」
をたこん「モンスターや君みたいな霊体も普通にいる?」
ヒトダマ「普通に、ってことはないですけどね。まあ、います。私みたいな……のはちょっと珍しいみたいですけど。あ、それから」
紅茶のカップを置くとヒトダマ、意味ありげに笑って続けた。
ヒトダマ「固体さんたちもいますよぉ」
固体さん「な……!」
ヒトダマ「ただし、人気ゲームのキャラとしてですけどね〜。あ、お代わり下さぁい」
相変わらず緊張感皆無の口調でそう言うと、ヒトダマは空になったカップを差し出した。
 
次回、「平行世界」
一人掃除を押しつけられたNATの運命や如何に!?(ヒトダマ早う帰ったり)

やはし遅筆・・・ 投稿者:日向@・・・・・
 
ものごっつ眠いぞ〜
 
「平行世界」
 
固体さん「俺が・・・ゲームのキャラクター、だと?」
信じられん、といった面持ちで固体さんが呟く。
ヒトダマ「そうですよ〜「メタルギア・ソリッド」ってゲームで、固体さんがシャドーモセス島に潜入してメタルギアREXを破壊するって話なんです〜。それで、私、その、固体さんの大ファンで、この世界に来て、なんとな〜くいろんなファイル見てたら固体さんが実在すると知って・・・はうっ」
メイ・リン「ちょっと!大丈夫?!」
またも気絶しかけたヒトダマに、紅茶のお代わりを持ってきたメイ・リンが慌てて声を掛ける。
・・・その拍子に。
メイ・リン「うわっ!」
ばしゃ。
ヒトダマ「ほぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫するヒトダマ。
その頭にちょこんと鎮座ましますさかさまのティーカップ(笑)
大佐「大丈夫か?!」
ヒトダマ「熱い、熱いですぅぅぅ〜〜〜〜」
全身紅茶まみれのヒトダマ。
固体さん「・・・・・」
をたこん「どうしたんだい、スネーク」
複雑な面持ちでヒトダマを見つめる固体さんに、をたこんが首をかしげる。
をたこん「もしかして、自分がゲームのキャラクターになっていたってことを気にしてるのかい?」
固体さん「・・・いや。まさかシャドーモセスのことをこいつが知っていたとはな」
ゲームとは言え、ヒトダマがざっと話した内容はまさに自分が数年前、経験した事である。
ということはだつまり・・・
考え込んだ固体さんにをたこんが多分ね、と口を開いた。
をたこん「世界っていうのは案外僕たちが考えているほど単純じゃないかもしれないよ。「平行世界」って言葉、知ってるかい?僕たちが存在するこの世界と、たとえばヒトダマが存在する世界って本来なら絶対に交わらない。そして、ヒトダマの世界のように「スネークはゲームのキャラクターだった」って可能性もある。つまり・・・なんていうかな、パラレルワールドみたいなものが無数に存在するってことじゃないかな」
固体さん「・・・と、いうことは・・・」
をたこん「もしかすると僕の方がスネークより背が高い世界があるかもしれない。可能性の数だけ世界が存在するとしたら、その中で本物のヒトダマの世界を探すのはかなり難しいよ。何の手がかりも無しには多分、見つからない」
ヒトダマ「ほえぇぇ、それって・・・もしかして、永久に帰れないってことですかぁ?」
メイ・リンに拭いてもらいながらヒトダマが尋ねる。
ヒトダマ「イヤですよぅ、帰りたいですぅ」
固体さん「そんなにも帰りたいのか?実在する俺と一緒にいたいのじゃないのか」
ヒトダマ「確かにそれもありますけどぉ・・・」
めそめそと泣き出すヒトダマ。
をたこん「大丈夫だよ。きっと君の世界は見つかる。僕が保証するよ」
ヒトダマ「をたこんさぁん・・・」
大佐「しかし、手がかりがないのではしばらくは無理なのではないのか?」
メイ・リンを手伝いながら大佐が尋ねてくる(セクハラや)
それに対し、をたこんは大丈夫です、と断言する。
をたこん「ある程度の情報は収集できたんだ、手がかりとしては少ないけれどもこれでかなりの数の世界はふるい落とされたわけだし、可能性はゼロじゃないと思うよ」
固体さん「・・・そうだな」
をたこん「でも、残念だよ。心強い仲間ができたと思ったのに・・・」
意味ありげなをたこんの言葉。
どういうことだ、と固体さんが首をかしげると。
をたこん「ほら、アーセナルで君に協力してくれたAI・・・オリジナルの「NAT」がいたじゃないか。でも・・・NAT-EEが消滅したのとほぼ同時に反応が無くなって・・・システムファイルがかなり破損していたからもしかするとNAT-EEと同時に消滅したんだろうね、きっと・・・」
固体さん「・・・あ、」
をたこんの言葉に重要なことを思い出した固体さん。
固体さん「おい、メイ・リン」
メイ・リン「なあに、スネーク?」
首をかしげたメイ・リンにひとつ頼みがある、と固体さん。
固体さん「いらなくなった服と下着、分けてくれないか」
メイ・リン「え?」
固体さん「だからその・・・ちょっと・・・な」
ぽりぽりと頬をかきながら固体さんがしどろもどろにつぶやく。
固体さん「ちょっと必要になってな・・・お前の服とか下着とか」
次の瞬間、ど派手に響く数発のハリセン音。
固体さん「ぬおっ!?」
メイ・リン「頼みがあるから何、って聞いてみたら服と下着?!スネークってほんっと、最低ね!!」
固体さんから奪い取ったハリセンを手に、メイ・リンが顔を真っ赤にして叫んだ。
メイ・リン「ヘンタイ!!」
・・・さすがの固体さんもこれにはかなりショックを受けたようだ。
(Aパート終了)

何故かわき腹が痛い・・・ 投稿者:日向@・・・・・
 
(Bパート)
大佐「・・・全く・・・度し難い」
をたこん「・・・スネーク、君って・・・」
人前でよくそんなことが言えるね、と呆れ顔の3人。
固体さん「違う!俺はそんなつもりで・・・」
ヒトダマ「固体さんの言うとおりですよ〜別に固体さん、メイ・リンさんの服で何かしようって訳じゃないですもん〜」
助け舟を出したのは意外にも(?)ヒトダマ。
ずずっと固体さんが飲まなかったコーヒーを代わりに飲みながらヒトダマが話を続ける。
ヒトダマ「実はですねぇ・・・NATさん、生きてるんですよ」
をたこん「えぇ?でももうどこのデータベースにもネットワークにも反応は無いんだよ?」
なのにどうして生きてると、と不思議そうな顔のをたこん。
をたこん「普通ならデータの片鱗くらい残っていてもおかしくないんだけどね」
ヒトダマ「だからNATさん、データの存在じゃないんです」
固体さん「そうなんだ、とりあえず聞いてくれ」
メイ・リンに思いっきりはたかれた頭をさすりながら固体さんも話しだした。
 
NAT-EEを倒す直前に消滅したと思ったNATが俺に力を貸してくれたわけだがそこからログアウトまでは完全に反応はなくなっていた。だから「神の光」を撃って全てのデータを吹き飛ばしたものの残留思念みたいなもので俺を助けてくれたと思ったんだ。
だが・・・俺がログアウトした直後、奴もログアウトしてきたんだ。
どうやら俺がアラストルを持ってログアウトした影響もあったんだろうがとにかく奴は今AIではなく、一人の人間としてこの世界に存在してしまっている。
が、この現実世界で生きていくにはあまりにも筋力と常識が無さ過ぎる。
だから奴が自力で生きていくことができるまでは俺が面倒を見ることにした。
 
固体さん「・・・だが、奴、口調や外見から男だと思っていたら実は女らしくてな」
メイ・リン「それで私に服と下着分けてくれって言ったの?」
それなら先にそう言ってくれればよかったのに、とメイ・リン。
をたこん「・・・けど・・・信じられないな」
固体さん「NATのことか?」
をたこん「いくら現実では説明のつかないものの力を借りたとはいえ、AIが生身の肉体で活動できるなんて考えられない、非現実的すぎる」
固体さん「だが、非現実すぎる存在であるヒトダマもここに存在するんだ、それこそNAT自身が平行宇宙の存在であれば人間として活動することも可能かもしれん」
そうかもしれないけど・・・とをたこんが不思議そうにつぶやく。
をたこん「・・・確かに人間の脳も電気信号で情報伝達はしているけどNATはAI、思考だけならまだ可能性はあるだろうけど筋肉を動かす信号ってないんじゃ・・・」
固体さん「・・・そうか!!」
分かった、と突然立ち上がって叫ぶ固体さん。
メイ・リン「どうしたのスネーク、いきなり大声出して」
固体さん「分かったんだよ、NATの筋力の無さの原因が」
人間になったばかりで筋肉を動かす信号が完成してないんだと固体さんは続けた。
固体さん「もちろん、VR空間ではそれこそ他の奴モーションデータを使えば動くことは可能だろう。だがそのモーションデータが現実でも使えるという保障はない上に恐らく・・・」
システムデータの破損の影響でモーションデータですらほとんど残っていないかもしれん、と言ってから固体さんはがしっとヒトダマを掴んだ(もちろん尻尾)
固体さん「・・・なんであいつ、大切なことを言わないんだ・・・!」
信号が完成していなければ無理に筋力をつけようとすると逆に筋肉を傷める結果にもつながりかねない。
固体さん「ヒトダマ、さっさとNATの掃除を手伝ってやれ!」
ヒトダマ「分かってますよぅ〜だから尻尾はって前から・・・」
足音荒く、固体さんが事務所を出て行く。
をたこん「・・・もしかしてスネーク、筋トレだといって掃除を押し付けてたのかな・・・」
メイ・リン「・・・そうみたい」
唖然とした面持ちで、をたこんとメイ・リンが顔を見合わせた。
メイ・リン「スネークの部屋なんていくら掃除してもきれいにならないのにね」
固体さんの部屋掃除の経験があるメイ・リン。
いくら燃えるゴミの始末ができたとしてもその他もろもろがあまりにも多すぎる。
NATに同情しつつ、メイ・リンはそれじゃあと席を立った。
メイ・リン「大佐、私、NATさんに渡せそうな服探してきます」
大佐「そうだな・・・しかし下着は新品を買ってやったほうがいいのではないか?」
メイ・リン「そうですね。じゃあ、着替えを持ってきてからジョイ・ディビジョンに二人で行ってみます」
そういい残し、メイ・リンも事務所を出て行った。
 
次回「筋トレよりも先に・・・」
多分、NATも筋肉を動かす信号については気づいてなかったと思うんだよね。

何? 投稿者:天麒麟@くたびれた
 
「筋トレより先に……」
 
(Aパート)
階段を2段抜かしで一気に駆け上がっていく固体さん(固体さんのお部屋は事務所の上階)。
尻尾を掴まれたヒトダマが激しい振動でうっ、とかにゃっ、とか奇声を発しているがお構いなしである。
固体さん「NAT! 生きてるか!?」
ロックを解除するのももどかしく、強引に扉を開ける。と、そこには……。
ヒトダマ「うえぇ〜、(振動で)酔った〜〜……って、な、NATさぁん??!!」
ダンボール雪崩に巻き込まれ、人事不省に陥ったNATが倒れ伏していた。
固体さん「NAT!」
ヒトダマ「ほにゃああぁぁ、NATさんが、NATさんが死んじゃいました〜〜!(涙)」
固体さん「死んでないっ! 気を失っているだけだ!!」
狼狽えるヒトダマに喝を入れ、慌てて崩れたダンボールの間からNATを引っぱり出す。
固体さん「おいしっかりしろ!」
軽く頬をぴたぴたと叩くと、う〜んと唸ってNATが薄く目を開けた。
NAT「……ス、スネーク……」
固体さん「何だ?」
NAT「………お、俺の墓には……白い花を植えて……(がくり)」
ヒトダマ「NATさん、NATさぁん、死んじゃダメですぅぅ〜〜!(滝涙)」
固体さん「だから死んでないっつーに! お前もそんな冗談こいてる余裕あるんならさっさと起きろ!」
ごん、ご〜ん。
固体さんの鉄拳制裁が二人の居候の上に下された。
 
固体さん「……で、どうしてこうなったんだ?」
取りあえず雪崩たダンボールを適当に避けて、思い思いの格好で床に座り込んだ三人。
NAT「あーー、それが……(汗)」
NATの話によると。
固体さんにヒトダマを拉致られた後、はたきくらいならかけられるかとヒトダマの見様見真似でぱたぱたしていたところ、バランスを崩して棚に激突、その拍子で崩れ落ちたダンボールの下敷きになってしまったらしい。
NAT「……でさ、何とか脱出しようと藻掻いてたんだけど、敢えなく途中で力尽きたってわけ」
とほほ顔で解説を終えると、NATは固体さんから渡されたアイソトニック飲料を一口飲んだ。
固体さん「まあ、怪我がなくて何よりだったが……やはりお前に掃除を任せたのは俺の采配ミスだったな」
NAT「うーん……掃除くらいできるかとも思ったんだけどさ」
やっぱ基本的な筋力が不足してんだな俺、と呟くNAT。
固体さん「いや、筋力以前の問題なんじゃないのか?」
NAT「……?」
固体さん「筋肉を動かすための電気伝達機能がまだ備わってない、或いは不完全な状態なんだろう? 考えてみれば元はAIであるお前が「肉体を動かす」データを持っているわけはないからな……」
ヒトダマ「アレの発達には経験値も必要不可欠ですからねぇ。NATさんにとってここのお掃除は、はいはい覚えたばっかの赤ちゃんにフルマラソンしろってことと一緒ですよぅ」
固体さん「お前……そこまで言うか?」
ヒトダマを掴み、尻尾をむぎゅうううっと引っ張る固体さん。その手の中であああごめんなさぃぃとヒトダマが謝り倒す。
固体さん「……何故言わなかった?」
藻掻くヒトダマを押さえつけながら固体さんが訊く。
NAT「…………」
NATが視線を落とした。
その様が何となく痛ましく見え、固体さんの手から思わず力が抜ける。いきなり手を離されたヒトダマがぽてんころころと床に転がった。
暫しの沈黙。しかしそれを押し破ったのはNAT自身の声だった。
NAT「そっか! それで体が思うように動かないのか!」
言わなかったのではなく、単に気が付かなかっただけらしい。
NAT「いくら筋力が不足してるからって、何で思い通りに動かないのか不思議だと思ってたんだけどさ、そーかそーかそうだよなあ、筋肉にちゃんと命令行ってないんじゃ、そりゃ動かないって…………ん? どうしたの、スネーク」
固体さん「…………いや、別に(汗)」
心配して損したな、とちょっぴりそう思う固体さん。
固体さん「まあともかく、お前には筋トレより先にリハビリが必要なようだ。まずは社会復帰を目指せ。筋トレはその後だ」
NAT「じゃあ、掃除は……?」
ヒトダマ(何故か床に転がったまま)「お掃除は私やりますんでぇ〜。でも固体さん、リハビリとなるとどなたか医療の心得のある人が必要なんじゃないですかぁ?」
固体さん「それには心当たりがあるから心配いらん」
ヒトダマ「あーー、もしかして」
あの人ですかぁ? と言いかけたその時、
メイ・リン「何これどうしたの? 前より酷いことになってるじゃない!」
着替えを持ってきてくれたと思しきメイ・リンの、呆れ返ったような声が響きわたった。
(Aパート終了)

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